グリーンクリニックコラム

睫毛を伸ばす魔法

わたしは濃い眉毛は見たことがありますが、毛深い睫毛というものは今まで見た覚えがありません。
美容的には長くてすこしカールした色の黒い十分な量の睫毛がきれいで魅力的に見えるのだと思います。
だから世の女性は一生懸命睫毛の手入れをするのでしょう。
暗い廊下に落ちていた娘のつけ睫毛を虫かと思って飛びのいたことがあります。

その睫毛ですが、薬で増やして伸ばすことができるようになりました。
睫毛が不足しているか不十分な状態を睫毛貧毛症と呼びますが、どの程度が不足していて不十分なのかは主観的なものかもしれません。
それでももっと長い睫毛をふやして目元を強調したいひともいることだと思います。
またいろいろな病気や抗がん剤など薬の副作用で睫毛が本当に少なくなってしまった状態でお困りのひともいるのかもしれません。

そのような人に吉報です。
他の国ではすでに承認されていた睫毛の貧毛治療薬が日本でも医薬品として1年前に承認されました。
もともと緑内障の点眼薬として開発されたところ副作用として睫毛が伸びたというところからこの薬ビマトプロストの開発が始まっています。
使い方は日に一度、点眼ではなく睫毛の基部にブラシで塗布して使います。
4ヶ月程度の使用で約4割に効果が出てくるようです。
副作用として目の虹彩の色が濃くなることがあると報告されています。
見た目のアンチエイジングにはいい薬ですが、残念なことに保険扱いは無く自費になります。

熱中症

梅雨明け後の7月中旬から8月上旬にかけての時期が熱中症のピークと言われています。
気温の上がる午後の12時から15時ころが危険です。

熱中症の診断は、暑熱環境に居る、あるいは居た後の症状として、めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、強い口渇感、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、痙攣、せん妄、小脳失調、高体温などを発症し他にこれら症状を起こすような病気が考えられない場合に診断されます。

熱中症は男性に多く若い男性では運動、中年以降の男性では労働に伴う発生が多いようです。
運動では2時間を超えるような場合に発生が多かったことがアメリカの研究で報告されています。
この時期、部活動などで練習のある若者も多いことかもしれませんが、長時間の練習はせず、短時間で切り上げることが大切だと思います。
指導者の方にはぜひ意識していただきたいと思います。

労働に伴う熱中症は当然、屋外での仕事が危険で高温多湿な場所、飲水できないことが重症化につながります。
体温を上げない準備(体の冷却)や十分な飲水を行いましょう。

高齢者では運動や労働とは無関係に屋内でも熱中症の発生頻度が増えています。 
屋内での熱中症は高齢の独居女性に多く、高血圧や認知症など他に病気のある人ほど重症化しやすいようです。
エアコンの未使用や非設置の場合、当然ですが高齢者では重症化するようです。

対策は体温を上げないこと。
暑ければ冷やすこと。クーラー 扇風機 水風呂 シャワー何でもいいので体温を平熱以上に上げないことです。
認知症のひとは真夏でも冬服を着ていることが多々あります。回りの人が注してあげねばなりません。
もし熱中症で体温が上がってしまったら平熱になるよう一生懸命に冷やしてください。
重症で救急車を呼ぶ場合にもその間をつかって水をかけるなり保冷剤を使うなり体温を下げることが大切です。
その際 動脈の拍動をふれる部位を冷やすと効果的です。
また水分と電解質の補充が大切です。暑いときは、真水ではなく電解質 塩気のあるものを飲む習慣をつけましょう。
必ずしもスポーツドリンクでなくてもかまいません。
昆布茶でもいいです。飲むことが大切です。

ひとは血管から老いる

「ひとは血管から老いる」というウイリアム オスラー先生の有名な言葉がありますが、内皮細胞の障害とともに人は老化するのです。
血管内皮細胞を直接障害するものとして、酸化ストレスや、アミノ酸の一種であるホモシステインという物質があります。
ホモシステインはビタミンの摂取が悪いと血中に増え、血管を傷害し動脈硬化を悪化させることがわかっています。

動脈硬化の予防、治療のためには酸化ストレス、ホモシステインを減らすことがとても重要です。

日本人の死因はガンを除くと脳血管疾患と心臓疾患が多く動脈の病気と深くかかわっています。動脈のケアがとても大切なのです。
動脈を輪切りにするとバームクーヘンのように3層の構造になっています。
血液が流れる内腔の方から内膜、中膜、外膜という壁があり、つねに血流にさらされている内膜表面には内皮細胞という薄い細胞があります。
この細胞がとても重要で、障害をうけて細胞がなくなると血管の構造が壊れ、人は病気になります。

内皮細胞の主な機能を説明しましょう。
怪我をして出血しても、時間がたつと血が固まり止血することはみなさん自分の体で経験しているはずです。
もし血管のなかで血が固まってしまったらどうなるでしょうか。
体中の血管がつまって血液が流れなくなり、つまった血管に栄養されていた組織や臓器には血が流れなくなり腐ってしまいます。
脳の血管がつまれば脳細胞が障害され脳梗塞になって麻痺がでたり、意識障害をおこしたり死んでしまうことがあるかもしれません。
血液が血管のなかで固まらずにさらさらと流れることが重要なわけです。
内皮細胞はそのために大きな役割を果たしています。
血が固まらなくなる成分を分泌してたえず血液がさらさらと流れるようにしているわけです。

血液のなかには血球などの血液成分の他に糖や脂肪などの栄養分や代謝産物、酸素、二酸化炭素などいろいろなものが混ざり血管のなかをたえず流れています。
これらが血管の壁から体の中にかってに染み込んでしまうと、人体はめちゃくちゃなことになってしまいます。
必要な栄養は必要なところへ送られ、いらなくなったきたない産物はちゃんと排出されるようになっているわけです。
内皮細胞がバリアーとなってこれらの血液成分がかってに血管壁を通り抜けないように調節しています。
内皮細胞がなくなると、そこに血栓という血のかたまりが付着したりコレステロールやカルシウムが沈着したりします。

血管の中膜には平滑筋細胞という平べったい細胞があり、この細胞が収縮すると血管が収縮し、弛緩すると血管が拡張して血液の流れる量を調節して体温を調節したり体の血圧を上げたり下げたりしています。
内皮細胞はこの平滑筋の収縮・弛緩を調節したり血管内で平滑筋細胞の数が増えすぎないようにしたり調節しています。

動脈硬化という言葉をよく聞きますが、皆さんはどのような状態を想像するでしょうか。
わたしは血管を直接、見たり触ったりできる心臓血管外科医になり、病気の動脈の汚さには驚きました。
健康な動脈の内面は平滑で白く光ってとてもきれいな色をしています。
しかし病気の血管はコレステロールがついて、黄ばんだ色になり、さわるといたるところが硬く、でこぼこして血管のなかには血栓という血液の古くなった固まりや粥状物といわれるきたないヘドロのような油粕がたまっています。
よくこんなものが血管の中にあってわれわれは生きていられるものだと感心します。
健康な動脈には弾力性があります。
しかし内皮細胞が障害されなくなってしまうと、血管の内面にコレステロールや血の固まりなどが沈着して内腔が狭くなり血管の壁のなかにもコレステロールやカルシウムが入り込み、壁の構造をこわします。
また血管の細胞が増殖して壁が厚くなり徐々に弾力性を失い硬くなってしまいます。
カルシウムがつくことで、まるで骨のようにかたくなってしまうこともよくあります。
このような人では、X線写真をとると、本来は骨しか白く写らないのに、血管が骨のように白く写ります。
ういった血管の変化を総称して動脈硬化症といいます。

動脈硬化症をおこした血管の機能は低下し、血液が血管のなかで固まって血管がつまる、血管が血圧を調節できずに高血圧になる、血管が狭くなり血液が流れなくなる、血管の壁が弱くなり血圧に耐え切れなくなると焼餅のように膨らんで動脈瘤となります。
動脈瘤が破裂したり裂けたり(解離ともいいます)すると命を落とすことになります。
皆さんはホメオスターシスということばをご存知でしょうか。
からだを健康な状態にたもつ恒常性を意味することばですが、このホメオスターシスのために、すなわち皆さんが現在の健康を維持するためには全長10万kmといわれる全身の血管をくまなく血液が流れることが必要です。
動脈を健康に保ち、すべての臓器、組織に血液をきちんと流すことが非常に大切なわけです。
血管の機能を保つことによってからだは常に新陳代謝がうまくいき若さを保つことができるのです。

血管の老化には動脈硬化が影響します。血管内膜にプラーク(粥腫)が形成されプラークが血管壁に取り込まれると潰瘍となり粥状(アテローム性)動脈硬化を起こします。その過程で弾性繊維の減少、血管平滑筋やコラーゲンの増加、カルシウムの沈着(石灰化)が起こり血管が硬くなります。実年齢に応じた血管の硬さがわかっていてそれよりも硬い血管は血管年齢が高いと評価されます。
血管年齢を調べるには頸動脈エコー検査、PWV、CAVIといった検査法があります。
頸動脈のエコー検査でプラークの有無、狭窄の有無、血管壁の厚さなどを評価します。 頸動脈は動脈硬化を反映しやすくエコーで観察しやすい動脈です。
血管の硬さを調べる検査には脈波伝播速度(PWV:pulse wave velocity)検査と心臓足首血管指数(CAVI:cardio ankle vascular index)検査がありどちらも四肢にマンショットを巻くだけの簡単な検査です。PWVに比べCAVIは血圧の高低の影響を受けにくいので私はCAVIを推奨します。
ただPWVもCAVIも大動脈と四肢動脈の測定値から計算されるものなので直接心臓の冠動脈や脳動脈を評価したものではありません。

血管再生医療

1997年、血管内皮細胞になるもとの細胞(血管内皮前駆細胞)に血管を新たに再生する能力があることが報告されました。
この細胞は骨髄のなかに多くありますが体の中を循環している血液中にも少数ながら存在しています。
この細胞を特殊な方法で採って血の流れの悪い場所の筋肉に注射してやると新たな血管が再生し血の流れが足りない症状が改善されます。
この治療法を血管再生治療といいますが、薬剤の効果が無く手術も行うことができない閉塞性動脈疾患(バージャー病、閉塞性動脈硬化症)の患者さんに対して有効な治療法です。
移植する細胞は患者さん自身のものであるため、拒絶反応はなく安全な治療法と考えられます。
多くの患者さんで虚血による疼痛の軽快、消失が認められ、大量に服薬していた鎮痛剤が不要になった、安眠できるようになったため睡眠薬が不要になった、難治性の潰瘍や傷が治り手足の切断を免れたといった効果が認められています。
また痛い足でも長く歩けるようになります。

ただこの治療は残念ながらまだ限られた施設でしか受けることができません。
わたしは神奈川県立循環器呼吸器病センターに勤務していたときに、神奈川県で初めて厚生労働省より血管再生治療を先進医療として認可していただき、多くの再生医療を経験しました。バージャー病、閉塞性動脈硬化症でお困りのかたはご相談ください。
薬や手術で治療できないような動脈の病気に対して、再生医療という新たな方法で治療できる時代になりました。
しかし血管専門医のアドバイスにしたがった病気の予防にまさるものはありません。
動脈の健康を維持することで、脳の血管、心臓、大動脈などの病気を予防でき、その結果寿命が延びるだけでなくひとからの介護を必要としない自立した明るい人生を送れることにつながります。

21世紀医療の世界的潮流

過去100年の間に現代医学すなわち西洋医学は急激な発展をとげました。
なかでも抗生物質の登場による感染症の治療や外科手術の進歩により今まで助けることのできなかった多くの命を救い、現代医学の恩恵を患者さんに与えてきました。

しかし現代医学をもってしても根治できない病気は多くあり、さらに最近になり抗生物質に対する耐性菌の出現や生活習慣病の増加、抗ガン剤をはじめ薬の副作用の問題など多くの高い壁がわたしたちの前に立ちはだかり現代医学は行き詰っているのが現状です。
現在の医療は対症療法の域をでないものが多く完全な治癒が得られないため治療をやめられることはほとんどありません。
いちど病気になるとずっと高額な薬をのみ続けることになります。その結果どの国の医療経済も限界に達しています。

こうしたなか1990年代になり、アメリカでは現代医療(Conventional Medicine)の限界を補う補完医療(Complimentary Medicine)、これまでの医療にかわる代替医療(Alternative Medicine)という新しい医療を求める動きが始まり、ひとつの大きな流れとして世界に広まりつつあります。
健康は他人から与えられるものではなく自分で勝ち取るものだということを強く意識したひとたちが担っています。
これらの医療の中心は栄養を十分に考えた食事、サプリメントからの足りない栄養分の積極的な補完、適切な運動やピラティス、カイロプラクティック、アロマテラピーなど世界各地に伝わってきた民間療法の知識を科学的に発展させ応用したものです。

本来私たちがもつ自然の力を最大限に発揮させるために、免疫力や活力を高め、有害物質をからだから排出させ、化学薬品などに頼らず病気の発病を食い止め、健康を維持しつづけ老化さえも遅らせよう(アンチエイジング)というものです。
いまはやりのプラセンタ(胎盤成分)をすでに楊貴妃も使って いたといわれています。
自然の力を最大限に利用することで化学薬品に頼ることが減り、重大な副作用は少なくなると考えられています。
またこの治療の利点は病気の治療だけでなく、病気の予防も可能になると考えられている点でしょう。

これからの時代は現代医学すなわち西洋医学一辺倒ではなく、補完医療、代替医療の長所を積極的に取り入れた統合医療(Integrative Medicine)を行うことの重要性に皆、気づき始めています。
この流れはだんだんと大きくなり全世界的な潮流になることでしょう。

日本においては明治維新の富国強兵政策にともない、江戸時代前から培われてきた漢方医学が明治政府により打ち捨てられ西洋医学が中心に行われてきました。
明治以後の日本の医者はせっかくの伝統医療を学ぶ機会さえ奪われ、今にいたっています。
医学部では漢方や予防医学の正式な講義はありませんでした。
しかし最近になりこうした医療のありかたが大きく変わり始めました。
唐の時代の名医が書いた「千金要方」の序文に、「上医は未だ病まざるの病を医し、中医は病まんと欲するの病を医し、下医はすでに病むところの病を医す」とあります。
古来より未病を治すことが、東洋医学の理想とされてきました。
こういった捉え方は大昔から東洋医学の理想で明治までの医師にとり常識だったことです。
東洋医学では、わたしたちの生命力や抵抗力を正気といい、タバコ、食べすぎなどひとに病気をもたらすものを邪といいます。
風、寒さ、熱など自然現象も邪になります。
この正気と邪のバランスで病気になるか健康体でいられるかが決まります。
病気を予防するためには、将来邪になるかもしれないものに対してしっかり対策を講じ、自分の正気を強くする必要があります。

統合医療は、まさに我々の伝統にそって正気を強めて不老不死を願い健康体をめざす仙人の修行に通じるものです。
西洋医学の力を利用しつつ、東洋医学の理想を追い求めること、それが21世紀の医療の方向性になるとわたしは思います。

LOX-index 検査

脳梗塞や心筋梗塞などの危険な病気を予知できる検査があります。それも血液検査で手軽に。

LOX-indexとは、

現在の血管の状態と、今後、動脈硬化が進みやすいかどうかを知ることができる血液検査です。
動脈硬化の原因となる変性LDLと血管にあるその受容体であるLOX-1という2つの物質を調べることで、リスクを測定します。
悪玉コレステロールLDLが酸化された変性LDLが最も危険な因子です。

動脈硬化は自覚症状がないまま進行する場合が殆どであり、ある日突然脳梗塞・心筋梗塞を発症してしまいます。
症状を自覚してから時間がないという点がガンとの一番の違いであり、最も怖い点でもあります。
動脈硬化は生活習慣の改善で比較的予防できる疾患であり、早めにリスクを知ることが大切です。

LOX-indexの値が高い方は、

動脈硬化が進行する可能性が高く、血管が詰まることが原因で引き起こされる疾患である脳梗塞・心筋梗塞が将来的に発症するリスクが高まります。
原因物質である変性LDL、LOX-1の増加を促してしまう要因として、生活習慣(喫煙、過度の飲酒等)、ストレス、運動不足等があります。
LOX-indexで手軽に具体的なリスクを知ることで、より意識の改善に繋げることができると考えられます。

こんな方には特におすすめします。

○ ご家族に脳梗塞・心筋梗塞に罹った人がいらっしゃる方
○ 高血圧、脂質異常症、糖尿病に罹っており、動脈硬化が気になる方
○ 将来の脳梗塞・心筋梗塞の発症リスクが気になる方
○ 40歳以上の方
○ 喫煙者

最終糖化産物

最終糖化産物

タンパクのアミノ基(-NH3+)にカルボニル(C=O)を介して糖が結合することを糖化といい、この反応が起こると褐色になることから発見されメイラード反応といわれます。
蛋白質と糖は最終的にAGEs最終糖化産物に変化します。アクリルアミドもAGEsのなかまです。アクリルアミドの発がん性の記事が読売新聞に出ていました。

生活習慣病 酸化ストレスでAGEsは全身に蓄積しガンだけでなくいろいろな疾患の原因になると考えられています。血糖値の高い糖尿病ではメイラード反応が促進します。また老化によりAGEsの蓄積が起こり、いろいろな組織が変化し病気が起こります。脳にたまると認知症になると考えられています。

食品の加熱処理でAGEs生成がすすむので、あまり焦げたものは食べない方がよいようです。加熱処理したあらゆる食品に含まれています。コーヒーにもあります。
糖尿病の指標になるHbA1c をご存知の方も多いと思いますが、赤血球の蛋白質であるヘモグロビンと血糖が結合したものがグリコヘモグロビン(HbA1c)で糖化した物質の一つです。

赤血球の寿命は約4か月なのでHbA1cの値は赤血球の寿命の半分2か月前の血糖値を反映しています。
ぶたちゃんの丸焼き AGEs多いです。

エクオール(植物エストロゲン)(商品名 エクエル)

大豆にはダイゼイン、ゲニスティン、グリシティンといったイソフラボンが含まれています。これらは大豆などのマメ科に多く含まれるポリフェノールの一種です。

ダイゼイン ゲニスティンはエストロゲン受容体に結合してエストロゲン様の作用を有するので植物エストロゲンとも呼ばれます。

特にダイゼインはある種の腸内細菌の働きでエクオールという物質に変換され植物エストロゲンの作用を持つようになります。イソフラボンの中ではダイゼインのエストロゲン効果が一番強くそれはエクオールの作用によります。日本人においては二人に一人がエクオールを作ることのできる腸内細菌をもっていますが、残念ながら50%の人はいくら大豆を食べてもエクオールを作ることができません。

エクオールは女性ホルモンのエストロゲンの中で一番強力なエストラジオールに比べるとその作用は非常に弱くマイルドに作用するようです。

以前、植物エストロゲンによる発ガン性の問題が心配されていましたがエクオールに関してはそのようなリスクは認められず安全だと考えられています。 

このほどよい強さの植物エストロゲンの作用により更年期女性のエストロゲン低下により引き起こされるいろいろな症状が軽快するようです。

その中でホットフラッシュの頻度の減少、肩こりの改善、骨密度の低下を減少させることなどが報告されています。またLDLを低下させ脂質異常を改善させ動脈を柔らかくする効果もみられています。さらに女性では特に注目される効果としてしわの深さや面積の改善が認められています。

乳ガンや子宮ガンはエストロゲン過剰の女性に多い疾患ですが、植物エストロゲンで本来のエストロゲンの作用を弱めることで発ガンのリスクを減らすことができます。

植物エストロゲンであるエクオールは抗男性ホルモン作用もあり男性ホルモンと関連した疾患である前立腺肥大や男性型脱毛(AGA)の予防効果も期待されています。

以下の方にエクオール摂取をお勧めします。

自分の腸でエクオールを作れない人(検尿で調べることができます)
更年期症状を予防、改善したい女性
脂質異常、骨密度低下、動脈硬化、高血圧を予防、改善したい人
いつまでも若々しくいたい人
肥満女性(肥満はエストロゲンを増やすので、乳ガン、子宮ガンの危険因子です)
子宮ガン 乳ガンの家系の女性
前立腺疾患がある男性
AGAを予防、改善したい男性

当院ではエクオールが製剤化された大塚製薬のエクエルを取り扱っています。(非保険となります)

ABI 血管脈波検査

血管の硬さや血流の状態を調べる検査には脈波伝播速度(PWV:pulse wave velocity)検査、心臓足首血管指数(CAVI:cardio ankle vascular index)検査、ABI (Ankle Brachial Pressure Index) 足関節上腕血圧比検査がありどれも四肢にマンショットを巻くだけの簡単な検査です。PWV, CAVIは血管を伝わる脈波の速さを測定します。硬い血管ほど速度が速くなり血管年齢は高いと評価されます。PWVに比べCAVIは血圧の高低の影響を受けにくいので私はCAVIを推奨します。

ABI (Ankle Brachial Pressure Index) 足関節上腕血圧比検査は足首の最高血圧を上腕の最高血圧で割り算した数値(足首の最高血圧➗上腕の最高血圧)を表します。

正常な状態では上肢よりも下肢の血圧が高いので、ABIは1より大きくなります。しかし下肢の動脈が狭窄したり閉塞したりすると下肢の血圧が下がり上肢の血圧を下回ると割り算の値が1より小さくなります。この値が0.9を下回ると下肢動脈に閉塞性病変があることを示唆します。値が小さいほど重症です。

PWV、CAVI、ABI検査は大動脈や四肢動脈の測定値から計算されるものなので直接心臓の冠動脈や脳動脈を評価したものではありません。